白内障があったとしても、自覚症状があまりないケースもあります。日常生活に不自由がなければ、定期的に検査を受けていただきながら様子をみていただくのもよいと思います。ただし、白内障が原因で緑内障を発症している場合には早めの手術をお勧めしています。白内障は徐々に進行する病気ですので、経過を診ているうちに手術が必要な状態になることが多いです。手術といっても数分で終わる痛みのない治療ですので、現在の見え方の状況に満足できなくなった時に手術をご検討ください。

治療の流れ

手術日までのスケジュール

通常、手術日までに最低でも1-2回は通院が必要です。他院から「白内障手術依頼」の紹介状（診療情報提供書）をお持ちの場合は、初診時より術前精密検査を行いますので、術前の通院回数のご負担を減らすことが可能です。ただし、ご希望される眼内レンズの種類や眼の状態・全身状態によっては術前の通院回数が増える場合もありますので、あらかじめご了承ください。

手術後の診療スケジュール

手術後は、基本的には翌日と翌々日の午前中に受診していただいております。術後炎症や術後眼圧上昇がなければ、約1週間後に診察を行い、症状が落ち着いていれば紹介状をお持ちの方は紹介元の眼科にお戻りいただきます。 紹介元のない患者様は引き続き、当院で経過診察を行ってまいります。

※お食事は特に制限はございません。
※温泉や銭湯やプールは１か月間お控えください。
※痛み止めは服用後、5-6時間は空けていただくようにお願いします。
※著しい視力低下、激しい痛み、目やにが多い、手術した目を打ったなどがありましたら必ず当院へご連絡ください。

白内障手術の方法

1.麻酔

手術は、点眼による局所麻酔で行いますので、目を触られる感覚や少し押されるような感覚、また手術中に使う目薬が少ししみる感覚などはある方が多いですが、ほとんどの方は痛みを感じません。手術中に痛みを感じる場合には、いつでも麻酔を追加できますので、ご遠慮なくおっしゃって頂けます。

2.切開

小さな創口で角膜を切開します。角膜には血管が通っていないので出血はほとんどありません。血をさらさらにするお薬を内服されている患者様も手術前に中止する必要はございません。

3.前嚢切開

水晶体の中身を包んでいる袋状の嚢の前面（前嚢）に円形の穴をあけます。

4.超音波乳化吸引

水晶体の核と皮質を超音波で砕き、濁った水晶体を吸引して取り出していきます。

5.眼内レンズの挿入

挿入された眼内レンズは目のなかでゆっくりと開きます。 乱視矯正用のトーリックレンズの場合は、ここでレンズの方向を厳密に乱視軸に合わせます。

6.手術終了

手術は約10分程度で終了します。手術直後は散瞳剤がきいていて瞳が少し広がっているため、足元にお気を付けください。

眼内レンズについて

眼内レンズとは、白内障手術で濁った水晶体の代わりに目の中に挿入する直径約6mmの人工のレンズです。眼内レンズにはメガネやコンタクトレンズと同じように度数があります。度数や種類を適切に選択することにより、近視や遠視、老眼や乱視も矯正することができます。眼内レンズは大きく分けて「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。「単焦点眼内レンズ」はピントを「近くに合わせるか」「遠くに合わせるか」を選択いただく必要があります。見えにくい距離については、手術後にメガネで補正すれば見えるようになります。「多焦点眼内レンズ」は複数の箇所にピントが合うように緻密に加工された特殊な眼内レンズです。すべての距離を見やすくカバーするレンズが入るため、手術後はメガネを使用する頻度を減らすことが期待できます。

単焦点眼内レンズの特徴

・保険適用の眼内レンズ
・手術前に、焦点を1つ決める必要がある（遠く、もしくは近く）
・手術後は距離に応じてメガネが必要
・乱視矯正用の眼内レンズもある

単焦点眼内レンズの特徴

・メガネ・コンタクトなしで見える範囲が広がる
・レンズの選択肢が豊富
・見え方の質にこだわりがある方、神経質な方は不向きな場合がある
・網膜疾患や緑内障がある方は不向きな場合がある
・費用が単焦点レンズよりも高額になる

白内障手術の費用（片眼分）

手術代 (単焦点・多焦点眼内レンズ共通)

1割負担の方…約18,000円 (高齢者医療の限度額により)
2割負担の方…約18,000円(高齢者医療の限度額により)
3割負担の方…約50,000円

多焦点眼内レンズ（三焦点）
クラレオン　パンオプティクス

片眼：320,000円　両眼：640,000円

多焦点眼内レンズ（三焦点　乱視矯正レンズ）
クラレオン　パンオプティクス・トーリック

片眼：350,000円　両眼：700,000円

多焦点眼内レンズ（三焦点）
テクニス　オデッセイ

片眼：330,000円　両眼：660,000円

多焦点眼内レンズ（三焦点　乱視矯正レンズ）
テクニス　オデッセイ・トーリック

片眼：360,000円　両眼：720,000円

多焦点眼内レンズ（三焦点）
クラレオン　ヴィヴィティ

片眼：320,000円　両眼：640,000円

多焦点眼内レンズ（三焦点　乱視矯正レンズ）
クラレオン　ヴィヴィティ・トーリック

片眼：350,000円　両眼：700,000円

※上記金額に含まれるもの：多焦点眼内レンズ・多焦点眼内レンズ使用に必要な検査（角膜形状解析による不正乱視の評価、コントラスト感度検査）（選定療養費以外にご負担いただく費用）
※白内障手術（水晶体再建術）、薬剤、上記以外の検査等は保険診療の費用として別途ご負担頂きます。
※多焦点眼内レンズを使用する場合は、手術代の他にレンズ代がかかります。(選定療養の適用)
※手術代は健康保険の自己負担割合によって変わります。

選定療養について

選定療養とは、治療に関わる追加費用を自己負担することで、保険診療対象外の治療を保険診療と併用して受けることができる国の制度です。本来、多焦点眼内レンズは保険診療の対象外のため、手術に関わる医療費(手術前後の検査・眼内レンズ・手術・処方薬の費用)が全額自己負担(自費)になりますが、厚生労働省の承認を受けている多焦点眼内レンズであれば、この選定療養を使用することができます。手術・検査・処方薬などの医療費は健康保険の自己負担分、眼内レンズ代は単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの差額分をお支払いいただくことになります。

眼内レンズの種類

Alcon社：Clareon Vivity（クラレオン ビビティ）

Clareon Vivity（クラレオン ビビティ）は、最新の技術が取り入れられ、従来の多焦点眼内レンズとは異なるコンセプトで開発されています。 従来の多焦点眼内レンズ特有のデメリットであるハロー、グレア（光がにじんで見えたり、まぶしく感じる）を最小限に抑え、単焦点眼内レンズのメリットを持ち合わせている眼内レンズです。ただし、近方は眼鏡が必要なことがあります。 欧米では2020年より普及していましたが、日本でも2023年に厚生省の認可を得て、「選定療養」対応の眼内レンズとして、販売・使用が開始されています。

Alcon社：Clareon Pan Optix(クラレオン　パンオプティクス)

Pan Optix(パンオプティクス)は、国内で初めて厚生省による承認を受けた「3焦点眼内レンズ」です。2020年に選定療養の制度が採用されはじめてから、2023年にFINE VISION（ファインビジョン）が選定療養になるまでは唯一の選定療養の3焦点眼内レンズであったこともあり、3焦点眼内レンズの中では最も症例数が多くあります。さらに2022年には素材を一部改良し、Alcon社最新の「クラレオン」の素材に変更され、よりメリットの大きい多焦点眼内レンズへとアップデートされています。 従来の多焦点眼内レンズ特有のデメリットである術後のハロー、グレア（光がにじんで見えたり、まぶしく感じる）はある程度生じます。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社：TECNIS Odyssey（テクニスオデッセイ）

TECNIS Odyssey（テクニスオデッセイ）はアメリカのジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発した最新の多焦点眼内レンズです。日本国内でも2024年11月から使用が開始されました。同社から発売されている前モデル「テクニスシナジー」の後継に位置付けられるレンズで、遠方から近方までよりなめらかに視界を移動でき、昼夜を問わず、よりはっきりと見えることが特徴です。さまざまなシーンでの見え方の改善が期待でき、室内での読書やパソコン作業から、屋外でのアクティビティまで、快適に楽しめます。